ボート競技というのは漕手が強いだけでは勝てない。
艇を最短距離で進め、漕手を鼓舞する舵手の存在が不可欠なのだ。
舵手の役割はオーケストラにおける指揮者によく例えられる。
レースの流れを予測し、戦略を立て、指示を出し、漕手を鼓舞することで勝利へと導く「舵取り」だ。
考えた戦略がその通りに実現する試合は少ない。時には劣勢に立たされることもある。
だが舵手は決して諦めない。刻一刻と変化する状況を見極め、相手との駆け引きを作り出す。
リアルタイムの戦況を把握し、希望を見出して漕手に指示を出す。漕手はそれを信じて全力で漕ぐ。
相手の一瞬のスキを突いてゴールへと突き進む。勝利を掴んだ瞬間は何にも代えがたい。
己を信じ、仲間を信じるからこそ手に入れる「勝利」を感じられるのは、舵手の醍醐味だろう。
なぜボート部に入って漕手ではなく舵手の道を選ぶのか?理由は様々だ。
共通しているのは、舵手が「自分の個性を発揮できるから」という考えだ。
レースで勝つにはどうすればいいのか、考える。漕手の力を発揮させるには何が必要か、考える。
「舵手は漕がない」。だからこそ自分にできることを追い求める。
運動に自信がない、体格が良くない、そんな不安を持っている人にこそ、挑戦してほしい。
不安をも「個性」に変え、「自信」に変え、「勝利」へと変える。それが舵手だ。